ニュースレター Vol.118

世界の医療事情

世界の医療事情Vol.9~コロナ禍における動物の状況~

コロナ禍で多くの人が在宅するようになったことから、ペットの飼育数が増え、世界的ににわか「ペットブーム」が巻き起こっています。2020年9月現在の情報 では、新型コロナウイルスに感染したヒトからペットへの感染は海外で数件確 認されていますが、ペットからヒトへ感染したという事例は報告されていません。とはいえ、動物由来の感染症は感染症全体の6割を占めるので、人・動物・ 環境の健康は互いに相関していると考える「One Health(ワンヘルス)」を、 世界中で連携しながら強化することが不可欠になるのではないでしょうか。

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アメリカでは、都市封鎖がピークに達した2020年の3∼4月で、シカやピューマなど野生動物の事故死が最大58%減少。

コロナ禍でペットによる癒しを求める人も増え、バージニア州の動物保護団体によると、保護犬や保護猫の応募申請 数が例年の3倍に上るなど、一部では良い影響も見受けられ ました。

また、ニューヨーク州のコーネル大学やマサチューセッツ州のタフツ大学の獣医学部では、動物の人工呼吸器 は消毒や調整をすれば人間にも使えることから、コロナ対 応で人工呼吸器が不足している病院に貸し出しを行い、人工呼吸器の確保に貢献しました。

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ハクビシンのスープや熊の手の煮込みなど、野生動物が漢方の食材として生活に深く根付いている中国。

54種類の野生動物が合法的に取引され、絶滅危惧種のクマ・トラ・センザ ンコウは、環境保護の観点から繁殖が認可されています。

なかでもセンザンコウのウロコは伝統薬として珍重されてい ますが、新型コロナウイルスは、コウモリからセンザンコウ を介して人間に感染したとみられており、2020年1月には 野生動物の食用利用が法律で禁止されました。一方、コロ ナの治療薬として扱われているクマの胆汁やヤギの角は、医療目的のため容認されています。

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糖尿病患者の血糖異常を匂いで感知できる「探知犬」が注目 を浴びていますが、新型コロナウイルスの感染者もほぼ100%の精度で検知できることがわかりました。

特別な訓練を受けた犬は、人間の1万倍の嗅覚を活かして感染者の代謝プロセスの変化を「匂い」で嗅ぎ分け、無症状の感染者の判別も可能。

ヘルシンキの空港では、国際線で入国する乗客が首の後ろを ぬぐった布をカップに入れ、その匂いを探知犬が10秒ほどでかぎ分けます。犬が陽性反応を示した場合のみPCR検査がで きるため、今後はコロナ探知犬が世界の多くの空港で活躍を 期待されています。

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オランダは毛皮用のミンク産業で世界4位ですが、動物福祉 の観点から、2024年に終了が予定されていました。

しかし2020年4月、155のミンク飼育場のうち4つの飼育場で新型 コロナウイルスの感染が発覚し、政府はミンクの飼育を即時 停止。60万匹近くがガスで殺処分され、飼育場への補償も決 まりました。

飼育場周辺の空気からウイルスは検出されていま せんが、労働者2名が感染していることから、動物からヒトに 感染した可能性も考えられています。また、猫のかかわりも指摘されており、現在飼育場では猫を出入りさせないように徹 底されています。